2011年07月31日

やさしい経済学

「日本の電力 民営の成り立ち」
      一橋大学教授 橘川武郎


日本の原子力発電事業は民間会社によって営まれながらも、
国策 」による支援(国家の介入)を必要不可欠とするという矛盾を抱えていた。

原子力発電に国家の介入が必要となる事情としては、まず、立地確保の問題をあげることができる。
原子力発電の立地を円滑に進める為には、電源開発促進税法など電源3法の枠組みが無くては成らない。
電源3法の枠組とは、電気料金に含まれた電源開発促進税を政府が民間電力会社から徴収し、
それを財源にした交付金を原発を含めた
発電所の立地に協力する地方自治体に支給する仕組みのことである。

これは、国家が市場に加入して原発立地を確保する手法であり、
民間会社は、自分たちの力だけでは、
そもそも原子力発電所を立地出来ない事を意味する。


原子力発電所への国家の介入を不可避にするもう1つの事情としては、
使用済み核燃料の処分問題、いわゆる「バックエンド問題」がある。

使用済み核燃料をリサイクル(再利用)するにせよワンスルー(直接処分)するにせよ、
国家の介入は避けて通ることができない。
とくに、現在の日本政府のようにリサイクル路線を採用する場合には、
核不拡散政策との整合性を図ることが必要になるが、
それが、市場のメカニズムとは別次元の政治的・軍事的事柄であることは、言うまでもない。


これらの立地問題やバックエンド問題に加えて、
福島第1原子力発電所の事故は、最も重要な非常事態発生時の危機管理についても、
民間電力会社だけでは対応できないことを明らかにした。
自衛隊、消防、警察、そして米軍までもが
福島第1原発1~4号機の冷却のために出動せざるをえなかったことは、
原子力発電事業を民営形態に任せることの「無理」を端的な形で示している。

現行の「国策民営方式」の大きな問題点は、原子力発電をめぐって国と民間電力会社のあいだに、
もたれ合い」が生じ、両者間で責任の所在が不明確になっていることにある。
電力各社は国策による支援が必要不可欠な原子力事業を経営から切り離した方が、
良い意味で私企業性を取り戻し、民間活力を発揮する事が出来るのではないか。

電力会社中最大の東京電力でさえ、
いったん重大な事故を起こせば経営破綻の瀬戸際に立たされる現実を見れば、
民間電力会社の株主(場合によっては経営者)の中から、
リスクマネジメントの観点で原子力発電事業を分離しようという声があがっても、不思議ではない。



















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Posted by ジェームス・ボン(ド)ベ at 07:31│Comments(0)♪ NO!!原発in沖縄
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